獣は禁断の果実を蝕むのか。


「その小松が選んだのはオレだ!!」


そう言いながら、ムリヤリ九重部長の腕の中から、自分の腕の中へと私を連れ戻した。


戸惑いながら2人の言い合いを聞いているしかできなかったけど。


まさか、専務がそんなことを言ってくれたことが驚きで。


この力強い腕が、まるで九重部長が言うように、専務は嫉妬しているみたいに感じられて。


「…私は、専務がいいです。」


たった一言。


それだけを言った。


「……っとに、絶対に奪い返す!!!」


ビシッと指を差すと、バタンッと大きな音をさせながら。


九重部長は専務室から出て行った。
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