獣は禁断の果実を蝕むのか。
偽りと愛

耳を突き刺すようなドアを閉める音にビックリして。


少しの間、2人で黙ったまま。


私は専務の腕の中にいた。


強く抱きしめる腰のあたりの専務の腕。


ほんの少し苦しくて。


「せ…専務?」


ゆっくりと顔を上げた。


「あ……悪い。」


戸惑った専務の顔。


初めて見た。


毛布から出ていた私の肩に触れた専務の胸。


ヒヤッとした感触がして。


パッと毛布を広げると、首元に手を伸ばして、そっと専務の体を包み込んだ。


専務は背が高いから。


少し背伸びをしないと、専務の体は包み込めない。

< 267 / 387 >

この作品をシェア

pagetop