獣は禁断の果実を蝕むのか。
一瞬でも、九重部長に嫉妬しているんじゃないかなんて、思ったのは勘違い。


きっと、九重部長とは犬猿の仲だから。


特に、九重部長は、次期社長に決まっている専務に嫉妬しているのは事実。


ただ、自分の物だったのが、嫌いな人にお下がりでもくれたくないってだけ。


九重部長も言っていた。


性別関係なく嫉妬するって。


きっと、相手が社長や常務とかだったら。


専務も私を簡単に手放すんだって、このほどかれた手がそう言っている。


急いで着替えると、毛布をたたんでソファの上に置いた。


「すみませんでした。」


深く頭を下げた。


ギュッと強く閉じた目。


もう、明日からはこの会社にはいない。


1800万円の借金を背負って。


私は警察の拘置所にいる。


専務の願い通り、二度と会うこともない。


3ヶ月、普通のOLだった私が、執行猶予で見せてもらえた。


最高の夢だった。
< 269 / 387 >

この作品をシェア

pagetop