獣は禁断の果実を蝕むのか。

「…決めなければいけないのは、オレの方みたいですね?」


小さくつぶやきながら口元をゆるめて、ゆっくりと目の前に歩いてきた。


「専務が?」


…まあ、私みたいな使えない秘書を持つなんて、相当な覚悟は必要だもんね。


でも、それでもそばに置いてくれるなら。


それだけで嬉しい。


ピタッと止まった専務の足。


そっと私の両頬を大きな手で包み込んだ。


ヒヤッとした専務の指に、ピクッと体が反応する。


ジッと見上げた専務の顔。


冷酷な瞳の奥に、不思議なくらい吸い込まれていく。


「愛という禁断の果実も良しとしますか…」


優しくほほ笑んだ口元に、ピクッと心臓が高鳴った。


「えっ!?どういう意味ですか?」

「……」


言葉は何もなかった。

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