獣は禁断の果実を蝕むのか。

「九重部長の言った通りです…まさか、気づかれていたとは。」


そう言いながら、苦笑いを浮かべてため息をついた。


「九重部長の?」

「九重部長だけじゃない、秘書室の皆にまで嫉妬してしまいました。」


眉をゆがめながら、観念したかのように口を開いた。


「秘書室にまで?」


どうして?


その言葉が理解できなくて、小さく首を横に傾けた。


「情けないことに…愛慕してしまっただけです。」


きっと、とってもすごくいいシチュエーションなんだと感じる。


でも、専務の言葉が難しすぎて。


「あの…あ…愛慕(あいぼ)って、何ですか?」


申し訳なさそうに聞いた。


ハア…っと、大きなため息をつかれるのは予想通り。


オデコに手を当てると、眉をゆがませた。


そして、私の肩をつかんで体を引き寄せると
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