獣は禁断の果実を蝕むのか。
小さくつぶやいた。
その甘い言葉に耳から熱くなって。
言葉を探すように、パクパクと口を動かした。
「いいんですか?」
それが、とっさに出てきてしまった言葉。
「それは、小松に聞きたい。」
ジッと見つめる瞳は、冷たいけどどこか温かかった。
「覚悟はできていると言ったはずです。」
しっかりと専務の瞳の中の獣に答えた。
「今、オレも覚悟は決まりました。」
フッと笑いながら、強く抱き寄せた。
今は、その言葉の意味を理解できないほど。
私は専務の腕の中の甘い香りに酔いしれていた。