獣は禁断の果実を蝕むのか。

「ああ…社長が危篤だって!!」


思い出したかのように、大きな声を上げた。


「社長が!?」


ガタッと専務が立ち上がった。


「昨日の夜、別邸で倒れたらしい。」


九重部長の言葉に。


真っ青な顔をして、口元を抑えながら立ち尽くしている私。


だって…昨日の夜は、皆瀬さんと別邸にいたはず。


慌てて向かった先は、秘書室だった。


動揺を隠しきれない秘書室のみんながフロアの中央に集まっていた。


「紗菜、皆瀬を知らない?」


室長の言葉に、必死に頭の中にある日本語を思い出そうとしている。

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