獣は禁断の果実を蝕むのか。

「社長が忘れた書類を届けに行ったら、倒れていたらしくて。救急車を呼んで病院まで付き添ってくれたみたいなんだけど。私が病院に行ったときには、皆瀬とすれ違いだったの。」

「連絡も取れないし…」


あかりさんが大きなため息をついた。


一体、皆瀬さんに何があったの?


小さく震える体。


クルリとドアに方向転換をすると、急いで秘書室専用のロッカールームに走った。


もしかしたら…


一抹の希望を持って。

ロッカーを開けて、携帯を取り出した。


携帯には着信履歴があって。


履歴一杯に、皆瀬さんから着信がついていた。


慌ててリダイヤルを押すと、ワンコールで通話に変わった。


「皆瀬さん!?どこにいるんですか?」


動揺を隠しきれない声で、電話の向こうに問いかけた。


「……どうしよう?」


か細く震える声。


「どうしたんですか?何があったんですか!?」


電話の向こうで震える皆瀬さんの声に問いかけた。
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