獣は禁断の果実を蝕むのか。
「……っ……の。」
震えた声が途切れて聞き取れない。
「今、どこにいます?」
本能的に、皆瀬さんに会わなきゃいけないと思った。
電話の向こうで震える皆瀬さんの声が、このままじゃ危ないと直感を働かせる。
「……ベルシス……ホテ……ルの………1108。」
「すぐに行きます!!待っていてください!!」
電話を切ると同時に、バックを持ってバタンッと勢いよくロッカーを閉めた。
「血相を変えてどうした?」
入り口のドアから聞こえた声に振り返ると、専務が不思議そうな顔をしながら立っていた。
「あ…あの…どうしました?」
…言えなかった。
きっと、裏切りを背負っている防衛本能に近かった。
状況が分からない今、皆瀬さんの事は言えない。
「社長は容態を持ち直したが、緊急事態だ。しばらくバタつきそうだから、これを渡しておこうと思ってね。」
そう言いながら差し出したカードキー。
「これは?」
手に取ると、専務の顔を見上げた。