獣は禁断の果実を蝕むのか。
ただ…これ以上、深みにハマってしまいたくないだけ。
でも、今しか見れない甘い夢を見たい自分もいて。
気持ちに折り合いがつかないだけ。
「好きにやっていてかまいませんから。」
「はい。」
小さな返事は、ちゃんと専務に聞こえたみたいで。
優しくほほ笑むと、ロッカールームから出て行った。
私も急いでロッカールームから出て行くと、猛スピードで皆瀬さんのいるホテルに向かった。
タクシーを飛ばして24分。
エレベーターが開くと、廊下を猛ダッシュ。
「1108…1108……」
部屋の番号を確認しながら。
廊下を走り続けた。
やっと見つけた皆瀬さんの言っていた1108号室。
息を切らせながら、ピタッとドアの前で足を止めた。
大きく深呼吸をすると
コンコン…
ドアをノックした。
「………小松?」
ドアの向こうから、微かに皆瀬さんの声が聞こえる。