獣は禁断の果実を蝕むのか。

「え?」


聞き返すと


「……睡眠薬だと思ったのに。」


ポツリ、ポツリと涙声で肩を震わせながら答えた。


「どういうことですか?」


睡眠薬だと思ったって…


あのヒートシールの事だよね?


記憶に出てくるのは、皆瀬さんが持っていた睡眠薬のヒートシール。


「…計画通り、社長のグラスに溶かして飲ませたら……」


一瞬、止まっていた涙が、再び一気にあふれ出して。


ギュッと私の肩に抱きついた。


「な…何があったんですか?」


室長の話では、皆瀬さんが書類を届けに行ったら、倒れた社長を発見したって言ってたけど?


「……しばらくして、社長が苦しみだして……倒れちゃって……私、どうしていか分からなくて。」


セキを切ったように話し出した。

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