獣は禁断の果実を蝕むのか。


「何か、併用している薬があったとか?」

「……違う。」


小さく首を横に振った。


「じゃあ…」

「密会がバレたらマズイから、書類を届けたら倒れたって救急隊には話したんだけど……検査したら…何かヤバイ薬だったみたいで…詳しい検査をしている間に怖くなって逃げちゃったの。」


その言葉に、全身から血の気が引いた。


もし、それを専務に。


…九重部長に使っていたら?


考えただけで怖くなる。


「皆瀬さん、その薬、どこから手に入れたんですか?」


コネとか言っていたけど。


どんなコネを使ったの?


薬局が処方箋に書かれていた薬を間違った?


「……常務に貰った。」

「常務が、ですか!?」


驚いたとか。


ビックリしたとか。


そんなんじゃなくて。


稲妻級の衝撃が心の中に走り抜けた。
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