獣は禁断の果実を蝕むのか。
元々、作られた専務好みの女になったからであって。
本当の私なら、専務は見向きもしなかったと思う。
最後くらい、アイツ、仕事出来るじゃんって、専務に思われたいから。
私の仕事は…
『スパイです。』
禁断の果実という甘い夢は2日で終わった。
それでも、触れることのなかった世界に。
味わえることのなかった甘味に。
出会えただけで幸せだと思う。
だから、涙なんかこぼさない。
背筋を伸ばして、ニッコリと笑いながら。
皆瀬さんに、この鍵を貰うまでの経緯を簡単に話した。
少し驚いていたけど。
「じゃあ、この鍵…小松、本当にいいの?」
顔をしかめながら、私の目をのぞき込んだ。