獣は禁断の果実を蝕むのか。
勝手に体は震えて、テーブルの上にミルククラウンにも似た透明な水滴の小さな、小さな王冠が次々に作られていく。
苦しくて、今にも引きちぎられそうなこの心。
こんなの、祐爾の時には感じなかった。
…生まれて初めて、産まれた感情だと思う。
裏切ってしまう罪悪感と、甘い夢なのに抱いてしまった愛情。
甘い夢と割り切っていたはずなのに。
ひと時の夢だって分かっていたのに。
こんなにも専務が好きだって。
今さら痛感させられた。
「ごめんなさい…ごめんなさい…ごめんなさい…」
うつむきながら、聞こえるはずのない言葉を何度も繰り返した。
そのたびに、ポタポタと落ちる涙。