獣は禁断の果実を蝕むのか。
「着てこなくても、着替えさせりゃいいだろう?」
ピッタリと首元までボタンを締めたブラウスの首元に指が伸びる。
思わず身をよじり、グッと首元のブラウスを握りしめた。
「どうして、そう言うことしか考えないんですか?たまには、仕事してください!!」
眉をゆがめながら、九重部長に声を荒げた。
「してるだろ?」
「どこがですか?」
「犯人捜し。」
「だから、犯人探しのどこが仕事なんですか?」
九重部長の言いわけに、呆れてしまう。
「こういう卑怯なヤツ、許せねえんだよ。」
そう言いながら、グッと近づけた顔。
ジャケットの胸ポケットから一枚の写真を取り出して。
私の目の前にヒラッと差し出した。
「……これ。専務が持っていたやつですよね?」
昨日のエレベーターでの私と九重部長の写真。
どうして九重部長が持っているの?