獣は禁断の果実を蝕むのか。
「朝、パソコンの画面に張り付けてあった。ご丁寧に『お下がりが好きですね。』って書かれていたってことは、梓悸だろう?」
思わず、クスッと笑ってしまった。
専務のやりそうなことだ。
「じゃあ、専務が撮ったってことですか?」
「違うだろ?梓悸なら、同じエレベーターに乗った瞬間、顔色一つ変えず『そんなにオレ達の情事が見たいのですか?』ってムリヤリエレベーターに乗ってくるのは目に見えてんだろ。」
…納得。
確かに、専務ならそんな光景を見たら発狂しそうだけど。
「だったら、誰が何の目的で?」
その言葉を出した瞬間、ハッと口元を抑えた。
…皆瀬さん?
しか考えられないけど。
専務とのいきさつや、デジウェアを手に入れた話をしたんだから。
もう、私を専務から引き離す必要…ある?
万が一、私が裏切った時のため?
疑問はいっぱい浮かぶのに、答えは見つからない。