獣は禁断の果実を蝕むのか。
そのメガネの奥の冷たい真っ黒な瞳。
まるで、獲物を捕らえるかのような冷たく凍りつくような視線。
その目ににらまれただけで。
体が固められたように動かない。
ゴクリと、息を飲むことも忘れるくらい。
思考回路も停止する。
噂程度なんて撤回。
本当に、マンガから飛び出ていたような人だ。
「…小松さん?」
皆瀬さんの呼びかけに、ハッと我に返る。
「あ…こ…小松沙菜と申します。よろしくお願いいたします。」
慌てて頭を下げた。
「分相応。」
たった一言。
それだけ言うと、視線を戻してカタカタとパソコンを打ち始めた。