獣は禁断の果実を蝕むのか。

「ダメです!!」


あらがおうにも、大きな掌で抑え込まれた両手。


ピクリとも動かない。


「すぐに、オレなしじゃいられなくなるから安心しろよ。」


耳元で囁いた。


「ちょっと…ま…」


言いかけた時


「いいからヤラレタふりしてろ!!」


ポソッと耳打ちした。


「え!?」


どういうこと?


困惑の表情を浮かべる私に、視線をプロジェクターなんかが収納されている収納庫に向けた。


ゆっくりと私の視線も収納庫に向ける。


「暴れたふりして、床に落ちろ。」


小さく耳打ちされた言葉に、瞬きで返事をすると、九重部長の体を押しのけたフリをして、九重部長が抑え込むフリをして。


2人で床に崩れ落ちた。

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