獣は禁断の果実を蝕むのか。

「アンちゃん!?どうして?」

「………」


口をとがらせながら、視線をうつむけて。


ムッとした顔のまま、デジカメを手にしていた。


「いい加減、諦めろよ。」


呆れた九重部長の言葉。


「どういうことですか?」


アンちゃんと九重部長の顔を交互に見た。


「梓悸の熱烈な追っかけ。」


フッと鼻で笑いながら、九重部長が答えた。


「追っかけ?」


パチパチと何度もまばたきをして、追っかけの意味を理解しようとしている。


「梓悸に相手にされてねえっつうのに。」


そう言うと、簡単にアンちゃんの事を教えてくれた。


専務がこの会社に入った時、女の子の間で騒がれた。


秘書室になんとか配属されたけど、室長付として仕事をして。


何度も専務にあの手、この手で迫ったけど相手にされず。


専務付きの秘書は、次々に食われては捨てられ…


捨てられては新しい秘書を付けられ。

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