獣は禁断の果実を蝕むのか。
「何がですか?」
「女好きって…」
「間違ってないと思いますけど?」
「普通、自分の男には使わねえだろ?」
「でも、事実ですし…」
「だよな。そういう所が、梓悸も気に入ったんだろ?」
「はあ…」
褒められたのかな?
バカにされたのかな?
まあ…でも、専務がそれが好きって言われてるのが。
恥ずかしいような感覚。
うまく言葉にならない。
「まあ、これ以上、悪さすんなら、重役の権限で業務妨害で地方に飛ばすぞ!!」
アンちゃんの首根っこをつかむと、眉間に深くシワを刻みながら、ジッと顔を見上げた。
「…はい。」
口をとがらせながら、渋々返事をした。
一件落着なはずだけど。
「ちょっと待ってください!!」
大きな声を上げると、会議室から出て行こうとする九重部長を呼び止めた。
「どうした?」
九重部長が振り向いた。