獣は禁断の果実を蝕むのか。

「では、失礼いたします。」


軽くお辞儀をすると、一歩足を下げ皆瀬さんと専務の部屋を出た。


「あの…専務の言葉。」


意味が分からなくて。


つい、聞いてしまった。


「専務執行役の秘書にふさわしい仕事しろ、ってことでしょ?」


なるほど。


そういうことね。


でも、私なんかにできること?


…違う。


やらなきゃダメ。


だって、1800万の借金と横領の事実。


犯罪者になって、借金なんか背負いたくない。


両手を握りしめて、小さく気合を入れた。


「さて、問題の室長。」


廊下の途中でピタリと足を止めると、クルッと後ろを振り向いた。

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