獣は禁断の果実を蝕むのか。
「開発した愚か者は、その常務ですよ。」
「え!?」
大きく開いた瞳には、一瞬、涙が止まった。
「キャピステールに潜り込んだとは聞きましたが…自分の失態を逆恨みして、何か仕掛けてくるとは思っていましたが。まさか、こんな形で送り込むとは。」
メガネを手で覆うかのように両端をつかむと、下から上に直すと深いため息をついた。
「そう……ですか。」
ゆっくりとうつむけた瞳。
口元は緩やかに笑った。
開き直りとか。
諦めとかじゃなくて。
重たい荷物が外れたように、どこか気持ちがスッキリして。
カラダが軽くなったみたい。
もう、嘘つきの小松沙菜じゃなくて。
本当の小松沙菜でいいんだって。