獣は禁断の果実を蝕むのか。

「何ですか?」


グッと近寄る皆瀬さんの顔に、少し後ろに身を引いた。


「いい?間違っても粗相だけはしないでね!!」


ビシッと顔の真ん中に指を差した。


「そ…それはもちろん。」


確か、社長の奥様でしょ?


常務に渡された、簡単な内部資料に書いてあった。


「ちょっと変わってる人だから。」

「変わってる?」


威張っているの間違いじゃなくて?


「そのうち分かるわよ。」


それだけ言うと、クルッと前を向いて。


止まっていた足を動かし始めた。


着いたのは、秘書室なんかじゃなくて。

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