獣は禁断の果実を蝕むのか。
「言ったではないですか?オレも覚悟を決めたと。」
真剣な眼差しが、私を戸惑わせる。
それは、私をダマす覚悟じゃなくて?
「何を言っているんですか?」
口元を緩めようとした瞬間。
「ダマされて、失脚してもいい覚悟を決めたと言ったんです!!」
その言葉と同じくらい強く、専務の腕の中に引き寄せられた。
「こんな状況で、冗談はやめてください!!」
もう、ダマさなくていいのに。
何を言っているの?
専務の体を引き離そうとする腕は、困惑しているから。
こんな状況の中で。
冗談なんかいらない。
堪えていた涙は、冗談でも抱きしめられた腕に。
嬉しくてこぼれ落ちてしまう。