獣は禁断の果実を蝕むのか。
「それは…私をダマすためで…」
言葉の途中だった。
そっと私の耳元に顔を近づけると
「愛しているという言葉では足りませんか?」
止まっていた涙は、一瞬にして大粒の涙となって流れ始めた。
そうだよ。
専務なら、こんな手の込んだことはなしない。
さっさと切り捨てて終わる。
それを一番よく分かっているけど。
認めてしまうのが怖かった。
嘘つきの小松沙菜じゃなく。
本物の小松沙菜を見ていてくれた。
好きになってくれたことが嬉しくて。
舞い上がってしまったら。