獣は禁断の果実を蝕むのか。
ひどい話じゃないの?
眉がゆがみそうになる。
「期待にそえなくてすみません。」
ムッと口がとがってしまう。
「…いや。分相応、なってみるか?」
「え?」
意味が分からなくて聞き返したのに。
「最後の仕事、しっかりやってこい!!」
冷酷な獣の瞳が、優しくほほ笑んだ。
「はい!!」
軽くお辞儀をすると、専務室を後にした。
これが、私の最後の仕事。
明日には、警察の拘置所だ。
大きなため息をついたけど。
それは、気合を入れるため。
本物の小松沙菜に戻れる、最後の仕事。
急いで皆瀬さんのいるホテルに部屋に向かうと、無事に偽物のデジウェアを皆瀬さんに渡した。