獣は禁断の果実を蝕むのか。
第4会議室。
コンコン。
皆瀬さんがノックをすると
「どうぞ~。」
中から甘い声が聞こえる。
「失礼いたします。」
さっきの藤衛専務と違って、可愛らしい声に変わった。
「あら、みなちゃん。どうしたの?」
ボブヘアをクルンと可愛く巻いた、背の低い可愛らしい女の人が振り向きながらほほ笑んだ。
「新しく藤衛専務執行役の秘書として入りました、小松沙菜を連れてきました。」
そう言いながら、窓辺に立っている女の人の後姿に声をかけた。
「あら、今日からだったかしら?」
透き通るような声をさせながら、クルリとこちらを振り返った。
髪の長い女の人。
社長の奥様って聞いてたから、どんなオバサンかと想像していたのに。
28歳くらいにしか見えない。