獣は禁断の果実を蝕むのか。

「常務に聞いたの。こっちの処理があってって適当な理由をつけて。」

「そうなんですか。で、今日は?」


「テレビ見れる?」

「はい。」


「じゃあ、急いでつけて。」


急いでそばにあったリモコンを手に取ると、テレビをつけた。


テレビから流れるのは、デジウェアの完成を発表するものだった。


「完成したんですね。」


久しぶりに見る専務の顔は、やっぱり私の知っている冷酷な獣の姿だった。


折り合いをつけていた心が。


フタが外れたように、抑えていたものがワーッと溢れだした。


そして。


ほほ笑む口元とは裏腹に。


大粒の涙がこぼれた。


「社長が倒れたりで発表が遅れたみたいだけど。無事にね…それだけじゃないわ。キャスピテールは、大変みたいよ?」


そう言われて、慌ててチャンネルを変えた。


そこには、デジウェンを彷彿とさせる内容の話がニュースになっていた。


「あのソフト…こういう仕掛けになっていたんですね。」


涙は止まらないのに。


クスッと笑った。

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