獣は禁断の果実を蝕むのか。
「うん。社長は副社長に降格したけど、九重部長は、なんと常務に抜擢。」
「あの、九重部長がですか!?」
信じられない。
仕事より、情事の方しかしてない気がしたけど。
「まあ、デジウェアの大元を作ったのは九重部長だしね。」
皆瀬さんの言葉に、口をポッカリと開けた。
「冗談ですよね?」
あの九重部長が。
デジウェアの大元を作った?
だって、専務が1人で作っているんじゃなかったの?
「発案は専務。で、大元になるデータを作ったのが九重部長。それを完成させたのが藤衛専務。」
そうだったんだ。
本当に最初しか関わっていなかったんだ。
でも、意外すぎる。
九重部長が仕事出来たなんて。
それより。
一番気になるのは。
「専務は…」
名前を出しただけで、チクリと胸が痛む。
緩む口元とは正反対に、視線はうつむいてしまう。