獣は禁断の果実を蝕むのか。
「……気にしてるんだ。」
視線を上げなくても、皆瀬さんがいたずらに笑っているのが分かる。
「ほら、デジウェアも発表したし、社長になったのかなって。」
繕ったような理由が出てくる。
「それがさ、足りないものがあるから、まだ社長にはなれませんって断ったのよ。」
フウッとため息をついた。
「あれだけの業績を出してですか!?」
パッと見上げた皆瀬さん顔。
皆瀬さんは優雅にほおづえをつきながら、ワイングラスを手に取った。
「まあ、完璧主義な所があるからね。」
「そうですけど…じゃあ、専務のままなんですか?」
「そう。社長は、空席には出来ないから。引き継ぎって理由で、まだ発表にはならないってことになっているけどね。」
「そっか…。」
社長になったとばかり考えていたから。
専務のままには驚いたけど。
足りないもの…
デジウェア以上に何かあったのかな?