獣は禁断の果実を蝕むのか。
「仕事ができないとか、もう、美味しくいただいたからいりませんって、次々にクビにしちゃうから、仕事を覚えてクビにしちゃって。業務が進まなくてこっちも迷惑しているの。だから、そんな簡単にはクビにはさせないから安心してね?」
そう言ってほほ笑みながら、ギュッと私の手をにぎりしめた。
「は…はい。ありがとうございます。」
涙が出そう。
社長の奥さんで、華やかな秘書室の室長って、もっと怖いイメージだったから。
こんな優しい人だったら。
なんか安心したけど。
この人もダマさなきゃいけないのが心苦しい。
少し複雑な気持ち。