獣は禁断の果実を蝕むのか。
「オレ?ここの管理人。」
「はあ?管理人?」
そんな話、皆瀬さん言ってなかったよ。
絶対に怪しい。
「オマエこそ、誰なんだよ?」
一層、眉がゆがむ。
「わ…私は、新しく藤衛専務執行役の秘書になった、小松沙菜です。」
口をとがらせながら、ジロリと不審者をにらみつけた。
「へぇ~、また変わったのを選んだもんだ。」
少し驚いた顔をしながらあごに手を当てると、さっきの怪しむ表情が一変して、物珍しい者でも見るかのように、ジロジロと私の全身を見回している。
「あなたは誰なんですか?」
威嚇(いかく)するかのように、私の周りを回りながらジロジロ見回す不審者に投げかけた。
「オレ?」
そう言いながら、スーツの内ポケットから、ポイッと名刺を差し出した。