獣は禁断の果実を蝕むのか。
「じゃあ、早速、着てみて?」
背中からポンと優しく両肩をつかんだ。
「でも、いいんですか?」
「いいの。本当は、紗菜に藤衛専務のことで辞めて欲しくなくて。買収?」
後ろから顔をのぞき込みながら、ニッコリと笑った。
「そんな。私、大丈夫ですから。気を使わないで下さい。」
これからやろうとしてることを考えたら、心が余計に苦しくなる。
「いいじゃない?せっかくの室長の心遣い、ありがたく受け取ってもらわなかったら、室長が心苦しくなるわ。」
その声に振り向くと、ドアに背をもたらせながら、アンちゃんが腕を組みながら立っていた。