獣は禁断の果実を蝕むのか。
そっか…せっかくの好意を断ったら悪いよね。
スーツに困っていたのも事実だし。
ここの人達、毎日、新しいスーツだもん…。
支度金もそんなに残ってないし、私の経済力だと毎日、新しいスーツなんてムリだったから。
「では、お言葉に甘えて…」
「そう?嬉しいわ。最近は買い物でストレス発散してるんだけど、もう自分の物は買い飽きたし、こうやってみんなに何か買うのが楽しくて。」
声を弾ませながら、次々に散らばっている服を手にとっては、私の体に当てて行く。
「お楽しみの所、申し訳ないんですけど…九重部長が、藤衛専務に頼まれていたものが出来たから、至急、開発まで取りに来てくれって。」
「九重部長が?」
「うん。あかりさんが言ってた。藤衛専務、時間とかうるさいから、早く取りに行った方がいいと思って。」
確かに。
3分で文句言われたんだった。
イヤな記憶が蘇る。