獣は禁断の果実を蝕むのか。
「梓悸に頼まれたものなんかないぞ?」
不思議そうな顔をしながら、あごに手を当てた。
「イジワルしないで下さい。焦らすのとイジワルは別ですよ?」
口をとがらせながら、眉間をゆがませているのに、九重部長の表情は変わらない。
「本当に心当たりないんだよ。」
「じゃあ、あかりさんが言ったのは…」
ポツリとつぶやいたのに。
九重部長の耳には聞こえたみたいで。
「お前、早くも敵を作ったな。」
そう言いながら笑って、ポンと軽く肩を叩いた。