獣は禁断の果実を蝕むのか。
「敵?」
「沙菜ちゃん知らなかったの?あかりちゃん、今は梶平(かじひら)常務の秘書をやっているけど、沙菜ちゃんが入社する少し前まで梓悸の秘書だったし…」
「そうなんですか!?」
目を丸く見開きながら、思わず声のトーンが上がる。
てっきり、みんな専務に手を出されてクビになったと思っていたから。
「それに…」
急に口を閉ざして、しまったと言わんばかりの顔をした。
その顔を見て見ぬふり。
「それに…何ですか?」
とぼけて聞いてみた。
「…あかりちゃん、梓悸の元婚約者。」
口元を手で隠しながら、視線を私からそらして。
あたかも、独り言のようにつぶやいた。
「うそ!?」
ポロッと口からもれた。
そのままポッカリと開いた口。