獣は禁断の果実を蝕むのか。

「用事なくなったんだろ?暇ならオレに抱かれる?」


耳を隠していた髪に触れると、そっと耳元で囁いた。


「なにを言い出すんですか!?暇だからって…」


九重部長にとって、そういう次元のことなの?


呆れて言葉も出ない。


「おいしいごちそうは、ゆっくり食べたいだろ?」


人目もはばからず腰に手を回すと、グッと体を引き寄せた。


「冗談はやめてください!!」


大きな声を出したけど、一瞬、フロアにいる人達がこちらを見ただけ。


まるで、いつものことかって感じで、すぐに視線は解散して仕事に戻っている。
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