獣は禁断の果実を蝕むのか。

「別に梓悸の女ってわけじゃないんだろ?」

「そうですけど、私にだって選ぶ権利があります。」


「オレは、欲しいものは力ずくでも手に入れるよ?」


そう言いながら見つめられた目の中。


狼のような。


牙を向いた獣がそこには住んでいた。


怯えたからとかじゃない。


専務の冷たい黒じゃなく、燃えるような黒の瞳の奥に。


少し戸惑っただけ。


「あ…」


小さく言葉を発したと同時

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