獣は禁断の果実を蝕むのか。

「では、本人に説明していただきましょう?」


冷たい視線は、チラッと私に向けられた。


「説明って、何ですか?」


戸惑う私の腕を専務の手が力強く引っ張ると、九重部長の腕の中から、自分の腕の中へと引きずり込んだ。


スッと私の腰に巻かれた専務の腕。


「アナタとオレの情事が聞きたいと言っているのです。九重部長の期待に応えてあげてください。」


冷たいのに、どこか甘く響く声が耳にかかる。


「じょ…情事って。」


そういうことだよね?


なにもないのに、どうやって説明しろと?


あったとしても、そんなこと人に話せるわけない。


「これは業務命令です。さあ、九重部長に、オレにどこをどうにされて嬉しかったのか?どうされた時が一番感じたのか。アナタの口からきちんと説明してください。」


甘い言葉とは裏腹に、腰に回された手には力が入って。


もうひとつの手は、プチっと外したブラウスのボタン2つ。


その指をスウウッと首から鎖骨。

ゆっくりと指先が胸元に落ちてくる。


ここで専務の機嫌を損ねて、秘書を外されても困るけど。

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