叶ってほしい


三年前、

小学三年生の時。



その時はなんの不幸もなく、幸せだった。



えりかもお母さんも靖典も、私も笑って毎日を過ごしてた。

その時靖典は単身赴任じゃなかったから家にいた。


不倫もする前だった。



十分すぎるくらい幸せだったのに



私はたくさん泣いた日があった。


それは聴力検査の日だった。





耳はいい方だった。

急だった。


急に耳が、右耳が聞こえなくなった。


正直あの時のことはショックであまり覚えていない。



周りからしたら、たったそれだけのことなのかもしれないけど、


目と耳がいいことだけがが自慢だった。



それしか自慢出来るようなものがなかった。


だからたくさん泣いた記憶がある。



だけどその時知らなかった。




耳が聞こえなくなるという事の本当の意味を―




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