結婚できるの?
さらに、亜里沙の恋心に火を付けた陽太の言葉……


「バンドのこと、千香には話せないんだよね。これ以上、自分の生き方を否定されたら辛いしさ」


その頃の陽太は、就職せずファミレスで働いていることを、千香から問い詰められてばかりだった。

定職に就いて欲しい、とも言われた。

そんな状況だったから、千香には打ち明けられなかった。

バイトだけならともかく、バンドまで否定されたら、千香と付き合っていく自信を失いそうで……。

陽太は千香を好きだったからこそ、言えなかったのだ。

三年前、陽太の事情や心境を初めて聞いた亜里沙は、涙が止まらなかった。

どんなに抑えようとしても、あとからあとから涙が溢れて、子供のように泣きじゃくった。
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