結婚できるの?
強気な言い方に聞こえたかもしれないが、千香は内心ハラハラしていた。

直球の質問を投げられた陽太は返事に困る。

コーヒーを飲んだり頭を掻いたりしながら、考える時間を稼いだ。


「もちろん、その気はあるよ」


千香の逆鱗に触れないよう、陽太は慎重に言葉を選んで話し続ける。


「でも今は俺の仕事も安定してないし、千香だってまだ20代だし、もう少しゆっくり考えていいと思うんだ」

「まだ20代って……。もう私たち、付き合って6年目よ?」

「うん、それは分かってる」

「陽太の仕事だってそうよ。『安定してない』って自分で言うなら、どうして安定した仕事に就こうとしないの?」
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