結婚できるの?
千香は驚いていた。

あれほど恋に悩み苦しみ、傷心の筈の亜里沙が、仕事に関しては前進していたことに。


「良かったじゃない」

「うん。最初は講師の補助みたいな仕事だろうけど、ここで頑張って、いつかは夢を叶えたい」


亜里沙の口から“夢”という言葉まで飛び出し、千香は軽い驚きと共に複雑な気持ちになっていた。

亜里沙と比べて、今の自分には夢なんてない……。

今どころか、タレント志望を諦めた23才のときから6年間、夢らしきものなんてなかった。

亜里沙も自分と同じだと思っていたし、正社員である分、まだ自分の方がマシだと思っていたのだ。
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