結婚できるの?
何年も着ているコートや安物のバッグを気恥ずかしく思いながら、千香はエレベーターまで進んだ。

普段の生活で感じる機会は少ないが、高級な場所へ来ると自分の質素さを痛感する。

もっとお洒落や贅沢を楽しみたい気持ちはあっても、千香の給料では無理なのだ。

分不相応な出費を続ければ、生活が破綻するのは目に見えている。

千香は高級ホテルに場違いな自分を感じつつ、エレベーターで高層階まで上がった。


「藤田で予約してるんですけど」


フレンチレストランの入り口で智和の名字を告げると、予約席へと案内された。

レストラン選びや予約は、智和が全部してくれた。
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