結婚できるの?
「大丈夫ですよ。気になるほどじゃないです」


亜里沙は答えながら、毅にも繊細な面があるのだと感じた。

今日の毅はいっとき不機嫌になったし。

陽気な楽天家に見えるけれど、感情の起伏は激しい人なのかもしれない。

混んだ電車に揺られながら、亜里沙はそんなことを考えていた。

電車が毅の降りる駅に到着した。


「じゃあ、また!」


毅は笑顔で亜里沙に告げてホームへ下りる。

当然ながら今夜の車内では、下りる寸前にキスをする早業など不可能だった。
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