結婚できるの?
だけど奈緒子は、簡単には引き下がらなかった。


「映画に誘うのは、お礼の意味もあるんです。いつも仕事でフォローしてもらってるから」

「どうして、お礼が映画になるの?」


亜里沙が訊ねると、奈緒子は笑顔で答える。


「この前たまたま映画の話になって、そしたら観たい映画が同じだったんです! だから一緒に行きたいと思って」

「うーん……。お礼をしたい、っていう奈緒ちゃんの気持ちも分かるけど、二人だけで映画はねぇ。千香の気持ちを考えて欲しいの」


亜里沙が優しく諭すと、奈緒子は視線を落として思案顔になった。

二人のやりとりを聞いていた千香の中で、怒りに近い苛立ちが弾ける。
< 73 / 744 >

この作品をシェア

pagetop