史上最悪!?な常務と
「何年か前、
とても大切に想っているひとを怒らせて不安にさせて
傷つけてしまったことがあった」
話す言葉のひとつひとつに胸が高鳴る。
「彼女を信じて強引に全てを捨ててついてきてほしい、
と言えばよかったのにできなくて」
時間が逆戻りしてゆく。
「…どうして…?」
さっきまでのこころの片隅にある、
傷を隠したカサブタが再び姿を現す。
肩が震える。
「そのときは自分の社会的地位も財産もすべて捨てて
1からやり直そうと決めたときで…。
そんな自分についてきてくれるのか、
またすり抜けられてしまうのか、
変な意地とプライドが邪魔してどうしても言えなかった」
ああ、アタシ、
このひとのことをとてもよく知ってる。
「それでも諦めきれなくて最後は彼女に判断を委ねたんだ。
その彼女はどうしたと思う?」
「……」
落ち着いた少し暗めの店内の大きな窓の向こうに見えるのは
賑やかなキラキラと日差しが降り注ぐ外の景色。