ふたつの背中を抱きしめた
ソファーに寝かされ呼吸の落ち着いた私の傍らの床に座り込みながら
綜司さんは私の手を握りしめてずっと俯いている。
「…ごめん。最近、過呼吸出てなかったから油断してた。」
「……なんで真陽が謝るの…?」
「ペーパーバッグ常備するのすっかり忘れてたなぁと思って。」
私は天井を見つめながらぼんやりと呟いた。
「ゴメンね、大したコトじゃないのに心配かけちゃったね。」
「…………」
綜司さんは、ずっと俯いて私の手を包むように両手で握っている。
「…死ぬかと、思った…」
弱々しく、綜司さんが呟いた。
「死なないよ、過呼吸なんかで死んだりしないってば。」
私の言葉に綜司さんがフルフルと小さく頭を振る。
「…真陽が苦しんでるの見て…このまま死んじゃったらどうしようって……」
「…綜司さん…?」
私は手を握られたまま上体を起こした。
「…もし、真陽が僕の目の前からいなくなったらって…そう思っただけで、僕は怖くて怖くて…おかしくなりそうになるよ…」
「…綜司さん…泣いてるの…?」
私の手を包む綜司さんの手が、震えていた。
もう片方の手で綜司さんの俯いた顔を撫でると、その手が雫に濡れた。
「真陽…約束してよ。絶対僕の前からいなくならないって。…お願いだから…」
ゆっくりと顔を上げた綜司さんは見たこともないくらい哀しい顔をしていて。
「真陽を失ったら…僕は絶対に、生きていけない…」
綜司さんの頬を撫でながら、私はゆったりと微笑む。
「約束するよ。私はいなくならないよ、綜司さん。」
ガチャリ、と
心の奥で音がした。
それは、
2個目の咎の枷が、嵌まる音。