ふたつの背中を抱きしめた
罪は、どんどん深くなっていく。
私が、息をするごとに。
時間が、1秒経つごとに。
閉じた目蓋の裏で、
柊くんの笑顔と綜司さんの泣き顔が
浮かんでは、消える。
「…真陽、眠れないの?」
「ん…ごめん、起こしちゃった?」
寝床で数回目の寝返りをうった時、隣で寝ていたはずの綜司さんが話し掛けてきた。
しばらくの沈黙が続き、また眠ったかと思った綜司さんが、再び口を開いた。
「…真陽、明日仕事休んだら?」
「えっ…どうして?」
私は仰向けになっていた顔を綜司さんに向ける。
「だいぶ疲れてるんじゃないかなぁと思って。本当はキツいの、無理してるんじゃない?」
「そんなコトないよ。ほら、最近暑かったからちょっとバテてたのかも。」
綜司さんは、ベッドの中でギュッと私の手を握った。
「真陽、辛かったら言って。僕はどんなコトだって必ず受け止めるから。いつだって真陽の味方だよ。」
その言葉は、
昨日までの私ならどれだけ温かく私の胸を満たしただろう。
一片の偽りもない、その優しい言葉は
今の私に、残酷な誓いをたてさせる。
「ありがとう綜司さん。その時はちゃんと言うから。ちゃんと頼るからね。」
----言わない。
絶対に、言わない。
私の罪を
綜司さんには。
だって
綜司さんはきっと
私の罪を
受けとめてしまう。
罪ごと私を
抱えてしまう。
心が血塗れになりながら
私を抱きしめてしまう。
だから
言わない。
私が良心の呵責に耐え切れなくなって
いつか心が壊れたとしても。
「おやすみ、綜司さん。」
絶対に、言わない。