ふたつの背中を抱きしめた
「園長、昨日休んじゃってゴメンな」
スタッフルームのホワイトボードに出欠記録を書きながら柊くんが席に座ってる園長に言った。
その言葉に、そこにいた全員が固まる。
私もタイムカードを押す手を止めて柊くんを見てしまった。
園長は目をパチクリさせたあと
「いいのよ、こちらからお願いして来てもらってるんだから。それに今日は来てくれたんだから助かるわ。」
と、いつものようにふんわり笑った。
私はあからさまに出てしまった動揺を柊くんに気付かれないようにそそくさと自分の机に戻る。
「じゃあ俺、チビ達の寝室片付けてくるから。」
柊くんはそう言ってスタッフルームから出ていった。
扉が閉まって柊くんが行ったのを見届けてから、まだ残っていた夜勤のスタッフの駒澤さんが
「ちょっと!?どうしちゃったんですか、柊くん!?」
と私と園長を交互に見やって叫んだ。
「柊くんが素直に謝ったの、私、初めて聞いたわ!」
駒澤さんの興奮は治まらない。
「彼なりに成長してるのね、きっと。」
園長はニコニコと目を細めて言った。
私は自分がどんな顔をしているか分からず、書類の束を読むフリをして顔を隠した。
さっきのコトと言い、私が柊くんを変えてしまった…と思っていいのだろうか。
それは喜ぶべきコトなんだろうか。
もし柊くんの変化が私のせいなんだとしたら、それは良い事である反面、私と普通ではない関係を結んだという事実の証拠でもある。
複雑な思いに私はいつまでも隠した顔が上げられなかった。